急須職人水野博司さんとの出会い

2011.01.19

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私は道具が好きです。良いお茶を作るためには優れた道具が必要です。
お茶の栽培管理機から茶刈機、製造機械まですべてが私にとっての信頼できるパートナーです。
私たちが大切に育て丁寧に製造したお茶を、美味しく飲んで頂くために欠かせない道具は、もちろん“急須”です。
十年前に父親から経営を譲り受けてから、量産経営から良質茶生産に取り組み、「平成十五年奈良県茶品評会一等農林水産大臣賞」、「平成十六年関西茶品評会一等農林水産大臣賞」受賞したのを切っ掛けに、極上茶の淹れ方にも興味を持ちはじめました。
正直に言って、生産はしていても淹れ方は人に教えられるレベルではなかったのですが、平成一七年に日本茶インストラクターを取得し、色々な場でお茶を淹れる機会が増えたこともあって、自分なりの美味しい淹れ方を会得したと思っております。
そして、さましたお湯を注いだ時にしっかりと茶葉が広がり又注ぎやすく最後の美味しい所のお湯が残らない“急須”の重要性に気づきました。それも最近よく見られるようになったステンレスの腰編みが浮いたタイプではなく、手作りの陶器の茶こしがある“急須”です。
以前から井ノ倉茶園の“極上かぶせ煎茶”をお求め頂いている御客様からどのような急須が良いのか、又良い急須はなかなかありませんねという声を頂いておりました。
昨年、質感の良い急須を見つけ、その作家、常滑焼の第一人者「水野博司」さんに思い切って電話をしてみました。おそるおそる切り出したのですが、とても優しい口調で、いつでもお越しくださいとのことで、急須職人としてもお茶生産者の意見もお聞きしたいと言う言葉を頂き大変うれしく、さっそく愛知県常滑市に向かいました。

お会いすると想像通りの優しい方でご夫婦仲良く自分のリズムでお仕事をされていました、そしてすごく研究熱心で、各茶産地を回り生産者の話を聞き、イベントで各地に出向いては、気になる急須を買い使ってみて研究するそうです、最後には半分にカットして、その断面と自分の急須とを比べるそうです。
現在六一歳ですが良い急須を作るためにチャレンジされています。何回かお邪魔し又水野さんも、奈良に来て頂くようになりました。
私はかねがね理想の急須を探しておりましたので、これから進めていく井ノ倉茶園のプレミアム商品として、オリジナル急須を頼んでみました。
そうすると快く引き受けて頂き約一ヵ月半かけて完成、2011/01/15念願のオリジナル急須を自宅まで水野さん直直に持ってきて頂きました。
さっそく極上かぶせ煎茶を淹れました、思ってた通り抜群に使いやすく上品な細いお湯を注げます。

その急須は二人用と五人用の二種類です。
土は愛知県知多半島(柔らかい土)と、滋賀県信楽(荒いプツプツの風合い)と、岐阜東野地方(固い)の土をブレンドし何回も何回も繰り返し土を漉して滑らかな土を作り、丁寧に丁寧に作られた急須です。1,250度の高温で焼かれているので非常に固く蓋を閉める時の音がとても綺麗です。1ミクロン単位で創られた隙のない仕上がりの美しさは完璧です。
形は少し平たく茶にお湯を注いだ時の茶葉の広がりが分かりやすく、とても持ちやすくお湯切れがいいです。こだわって作られている所は、お茶を注ぐ時急須から出るお茶が、清水の様に細く、湧水が注がれていく様なイメージを持って創られています。蓋の先は橋の欄干(キボウシ)をイメージし、とても上品です。
又茶こしの穴を細かくしてもらったのに湯切れがいいのは企業秘密です。
そして釉薬を使っていないので、渋みを取ってくれ、お茶が格段に美味しく入ります。
まだすごいのは、使いこんでいくと素朴な土の光沢が出て深みのある風合いが出てきます。
まさに水野さんの優しさが伝わる作品です。
この急須を「急須で淹れる煎茶の愉しみ」井ノ倉茶園のマークにさせて頂いております。

<陶歴>
1979中日国際陶芸展入選 1980日本伝統工芸展入選 中日国際陶芸展入選 イタリア・ファエンツァ国際陶芸展選抜出品 1982日本クラフト展入選 中日国際陶芸展入選1983日本クラフト展入選 1985日本クラフト展クラフト賞受賞 金沢国際ゼザインフェア佳作受賞 1989国際陶磁器美濃‘89入選 1990伊丹クラフト展入選 1992国際陶磁器美濃‘92入選 日本工芸展招待出品 1993工芸都市高岡‘93クラフトコンペ入選 2005工芸都市高岡‘05クラフトコンペ入選国際陶磁器美濃‘92入選 1993工芸都市高岡‘93クラフトコンペ入選 2005工芸都市高岡‘05クラフトコンペ入選クラフトコンペ入選 2005工芸都市高岡‘05クラフトコンペ入選日本のクラフト・手・もう一つの生活展にてクラフト・センター賞受賞東海伝統工芸展 6回入選その他各地にて個展、グループ展

陶房 博司   水野博司